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【結論】インプラント周囲炎は予防と早期治療が鍵
インプラント周囲炎は、インプラント治療後に起こりうる合併症で、進行するとインプラントを支える骨が溶け、最悪の場合インプラントが抜け落ちてしまう病気です。しかし、その多くは日々の適切な口腔ケアと歯科医院での定期的なメンテナンスによって予防が可能です。もし歯茎の腫れや出血といった初期症状に気づいた場合は、放置せずに速やかに歯科医師へ相談することが、インプラントを長持ちさせるために最も重要です。
インプラント周囲炎の進行段階
症状
- 歯肉の発赤
- ブラッシング時の出血
治療法
プロフェッショナルクリーニング
症状
- ポケット深化
- 排膿
治療法
デブライドメント・抗菌療法
症状
- 骨吸収の進行
- 動揺
治療法
外科的治療・再生療法
インプラント周囲炎とは?歯周病との違い
インプラント周囲炎は、文字通りインプラントの周囲組織に起こる炎症性疾患です。天然歯でいうところの歯周病に相当しますが、いくつか重要な違いがあります。インプラントは天然歯と異なり、歯根膜という組織がないため、細菌に対する防御機構が弱く、炎症が骨に直接広がりやすい特徴があります。そのため、一度発症すると歯周病よりも進行が速い傾向にあります。初期段階は「インプラント周囲粘膜炎」と呼ばれ、この時点では歯茎の炎症に留まりますが、進行して骨の破壊が始まると「インプラント周囲炎」と診断されます。ある研究報告によれば、インプラント周囲炎の有病率は患者単位で22%にものぼるとされており[1]、決して稀な病気ではありません。

インプラント周囲炎の主な原因とリスクファクター
インプラント周囲炎の直接的な原因は、インプラント周囲に付着したプラーク(歯垢)に含まれる細菌です。特に、歯周病の原因となる細菌群が深く関与していることが分かっています。これらの細菌が産生する毒素によって炎症が引き起こされ、インプラントを支える顎の骨が徐々に破壊されていきます。加えて、口腔衛生不良、歯周病の既往、喫煙、糖尿病、過度な咬合力といった要因はインプラント周囲炎の発症リスクを高めることが知られています。
— POINT
インプラント周囲炎の症状と進行ステージ… … 次のセクションで詳しく解説します。
インプラント周囲炎の症状と進行ステージ
インプラント周囲炎は初期段階では自覚症状が乏しいのが特徴です。初期(周囲粘膜炎)では歯茎の腫れや出血が見られますが、進行すると歯周ポケットが深くなり、膿が出たり口臭が強くなったりします。さらに進行した後期にはインプラントが動揺し始め、強い痛みや腫れを伴うこともあり、最終的にはインプラントの喪失に至る可能性があります。少しでも異常を感じたら、速やかに専門医の診察を受けることが不可欠です。
インプラント周囲炎の治療法
インプラント周囲炎の治療は進行度に応じて選択され、原因である細菌の徹底的な除去が基本です。初期段階では専用器具による機械的清掃(非外科的治療)が中心ですが、抗菌薬を併用することもあります。進行した症例では、歯茎を切開してインプラント表面を直接清掃する外科的治療が必要となります。骨の欠損が大きい場合は骨移植を伴う再生療法も検討されますが、いずれの治療にもリスクや副作用が伴い、効果には個人差があります。費用は自由診療となり、症状や治療内容によって大きく異なります。

インプラント周囲炎を予防するための具体的なホームケア
インプラント周囲炎の予防は、毎日のセルフケアと定期的なプロフェッショナルケアが最も重要です。セルフケアでは、インプラント専用の歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスを用いて、インプラント周囲を丁寧に清掃します。しかし、セルフケアだけでは除去しきれない汚れがあるため、2〜6ヶ月に一度の定期メンテナンスが不可欠です。歯科医院での専門的なクリーニングと検診が、インプラントを長期的に維持する鍵となります。
よくある質問
Qインプラント周囲炎は自分で治せますか?
いいえ、インプラント周囲炎を自分で治すことはできません。骨の破壊が始まった周囲炎は専門的な治療が必須です。自己判断で放置せず、必ず歯科医師に相談してください。
Qインプラント周囲炎の治療は痛いですか?
治療中の痛みは麻酔で最小限に抑えられます。外科処置の場合は術後に痛みや腫れが出ることがありますが、痛み止めを処方します。痛みの感じ方には個人差があります。
Qインプラント周囲炎の治療期間はどのくらいかかりますか?
治療期間は進行度や治療法により大きく異なり、数回の通院で済む場合から1年以上かかることもあります。担当医が個別の治療計画をご説明します。
Qインプラント周囲炎は再発しますか?
はい、再発のリスクはあります。治療後もセルフケアや定期メンテナンスを怠ると再発する可能性が高まります。継続的なケアが非常に重要です。
Qインプラントがグラグラするのですが、どうすればいいですか?
インプラントの動揺は周囲炎が進行しているサインか、上部構造の緩みが原因かもしれません。放置せず、直ちに治療を受けた歯科医院を受診してください。
Q喫煙はインプラント周囲炎にどのくらい影響しますか?
喫煙は血流を悪化させ、細菌への抵抗力を弱めるため、インプラント周囲炎の重大なリスクファクターです。非喫煙者に比べ発症・進行リスクが数倍高まると報告されています。
Qインプラント周囲炎の治療費は保険適用されますか?
原則として保険適用外の自由診療となり、全額自己負担です。ただし、医療費控除の対象になる場合がありますので、詳細は国税庁のウェブサイトなどでご確認ください。
参考文献・出典
- [1]Zitzmann NU, Berglundh T. Definition and prevalence of peri-implant diseases. J Clin Periodontol. 2008;35(8 Suppl):286-91. doi: 10.1111/j.1600-051X.2008.01274.x
- [2]厚生労働省. e-ヘルスネット. 「歯周病」. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-03-001.html (2024年7月29日閲覧).
- [3]特定非営利活動法人 日本歯周病学会. 「歯周病患者における口腔インプラント治療指針およびエビデンス2018」. https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_implant_2018.pdf (2024年7月29日閲覧).
記事監修

東海林弘子(しょうじ ひろこ)
ORCインプラントクリニック大磯 院長
資格・所属学会
学歴
昭和医科大学歯学部卒業
※本記事は医療広告ガイドラインに準拠して作成しています。治癒を保証するものではなく、治療効果には個人差があります。
詳しくはカウンセリング時にご説明いたします。


